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Johann Johannsson / Dis

Johann Johannsson / Dis_a0074417_425325.jpgArtist : Johann Johannsson
Title : Dis
Label : The Worker's Institute
Relesed : 2005
Number : TWI002







首都レイキャヴィークを拠点に、Sigur Ros や mum といったアイスランド出身のアーティストが交流する場の形成を目的とし、また新たなクリエイティブを促進するシンクタンクとして設立された団体 Kitchen Motors のオーナーの一人である Johann Johannsson の自身通算3枚目となるフルアルバム。

前作までは、Fennesz や Ryoji Ikeda 等も作品を提供するイギリスの Touch というレーベルからのリリースだったのだが、今作は地元レイキャヴィークにあるレコードショップが運営する The Worker's Institute というレーベルからのリリースとなった。

このアルバムは、アイスランドの新鋭の女性映画監督 Silja Hauksdottir の同名映画のサウンドトラックとして制作されたものを基に構成されており、様々な表情を持つ楽曲群が収録されています。

氏は、これまで舞台劇や教会をモチーフとした作品をリリースしてきましたが、それらはどちらかと言えば、北欧の風土を反映した美しい穏やかさを持った荘厳なオーケストレーション主体の楽曲が多いのが特徴的。
しかし、今作において、グリッチが絡む普遍的なエレクトロニカや、80年代を彷彿とさせる少しチープなロック・サウンド等、今までの印象を大きく覆す意外な内容となっています。
特に表題曲となっている"Dis"は、アルバム収録曲中唯一の歌モノで、女性Voの優しいハーモニーが印象的な珠玉の名曲です。

映画のサウンドトラックがコンセプトとは言え、一つの作品にこれだけバラエティ豊かな楽曲を凝縮出来るのも、氏の持つ音楽性の幅広さと、それを更に育んだであろう地元での活動が大きく影響していると思われます。

ちなみに、P-vine からリリースされている日本盤は、"Bankok Nordursins"が再録され、ボーナストラックとして"Dis"の Long Ver. が収録、日本語解説も追加されている模様。
http://www.p-vine.com/app.php/mo/Shop/ac/ProductDetail/id/3231


■Johann Johannsson 公式
http://www.johannjohannsson.com/

■試聴サイト (@ The Worker's Institute )
http://www.workersinstitute.com/releases.html
# by anmlcrs | 2006-06-22 05:13 | disc review

Sickoakes / Seawards

Sickoakes / Seawards_a0074417_493987.jpgArtist : Sickoakes
Title : Seawards
Label : Type records
Relesed : 2006
Number : TYPE010







近年、幅広いアプローチでリリースするType作品の中でも異色な作品。
Sickoakes は1999年に結成され、ウェーデンの首都ストックホルムを拠点に活動する6人組のバンドで、ギターx2・サックス・トランペット・ベース・ドラムという少し変わった編成になっているのが特徴。
Typeからのデビューにあたり、新たにサックスが一人加入しているようで、ツインサックスという更に面白い編成になっている。

ネットレーベルやCD-Rでのリリースを重ね、今作"Seawards"によってデビューを果たした彼ら。
収録されている全7曲中3曲が10分超の長尺になっているのだが、アルバム全体を通して一つの物語が展開していくような楽曲群で構成されています。
基本的にはポストロックの文脈で、静謐なギターのディレイ・フィードバックに乗せて、緩やかにリズムが絡み、サックス等はメロディーのアクセントとして登場します。

序盤は物語の導入として、日常空間から少しずつ深い海底や精神世界へと誘い込むかのような滑らかな起伏を持つ展開になっており、中盤以降はリズムの緩急に拍車がかかり、クラシカルに描いたり、現代的に描いたりと、よりダイナミックなアプローチへと移行し深いドラマ性を刻んでゆく。
これによって、深く暗い奥底に一度は沈殿された衝動が一気に浮上し、蓄積された高揚感を伴いながら、暴力的なまでに開放させていくような迫力が感じられ非常に心地良い。
こうしたサウンド面は、序盤は同じレーベルメイトの Deaf Center を、中盤以降は Godspeed You! Black Emperor を彷彿とさせます。

全くプログラミングされていない生演奏は透明な空気感を持ちながら、緻密で繊細な感性によって美しく綴られ、聴いた者を各自のインナー・スペースの巡礼から救済へと導く壮大な叙事詩として完結させる。
デビュー作にも関わらず、ここまで大胆な作品を送り出す彼らは、今後の活動も期待される注目の新人の一つです。


■Sickoakes 公式
http://www.sickoakes.tk/

■試聴サイト (@ Type records)
http://www.typerecords.com/releases/full.php?id=15
# by anmlcrs | 2006-06-20 05:39 | disc review